Thursday 25 September 2014

転んだら起きる

今日は、某女子短大の2年生に、演出家の仕事と、そこに至るいきさつをお話ししました。

転機は大学の3年のときに訪れました。

留学したいと思って奨学金や交換留学を探してい ました。
4年生で留学すればいいや、と3年生の頃、模擬試験のつもりで、いろいろな交換留学(慶応には幾つもあったのです)試験を受けました。TOEFLの点数が足りずに、受けることさえできなかった留学試験もあったのです。
カナダ留学のは、TOEFLにあまり関係なく受けることができました。

が、受けてびっくり。
なんて私には一般教養がないのだ!!!
世界史は上智の外国語学部の試験さえ、100点満点の自信(わからない質問がなかった。せいぜい、北京と周口天(北京原人の発見現場)の場所当てクイズが、微妙だったな、程度で)で合格してきたのに、世界史に登場しない、建国100年のカナダのことはナニヒトツ知らない!

設問は、
日本の総理大臣を5人、漢字のフルネームで書け。
・・・田中角栄しか書けなかった
カナダの元首は?
・・・元首ってなに?
カナダの州を5つ書け。
・・・ケベック。おわり。

幸いにして面接は筆記試験の成績に関係なく、次の日に全員が受けることになっていた。
私は、試験のあまりの出来の悪さにショックを受け、面接が終わってから、
「あのー、すいません、昨日の試験が最悪で、自分がいかに教養もなく知識もなく過ごしてきたか痛感しました。正解を今から、上から順に言いますので聞いて頂けますか?」
もちろん、問題用紙は持って帰れない。あまりのショックに、全設問を暗記していたのです。

2週間後、合格。
ひとりだけ。

ひえー。補欠だったのかな?

合格者への面談があるので、そちらへ出向くと、ずらっと並んだ面接官が;
「あなたの成績は最低でした。」
「・・・」
「が、作文がよかった」
「・・・」
「でも、なによりも、私たちは、あなたが、自分の非を認め、それを消化・解消してそれを示してくれたことに、あなたの可能性を見ました。海外では、転ぶことはいくらでもあります。転んでも、起き上がれる人、それこそが、海外で留学生活を送るには最も大切な資質なのです。だから、私たちは、あなたを送ることにしました」

転んでも起き上がれること。

自分では、そんなヒロイックなつもりではなかったので、逆に、へー、と思ってしまったくらいです。

私はそれよりも、その私を選んだ試験官達が偉い、と思っています。
試験官達は、「だから、来年、がんばってね」と言うことは簡単だった筈です。
でも、その年に、私を送ってくれた。

私は演出家として、オーディションもよく、行ないます。
講師としてひとに評価も付けます。
でも、いつも、この、私をカナダに送り出してくれた試験官達の言葉を思い出すのです。

この人の可能性に掛ける。

私はそういう気持ちでひとりひとりと接しているだろうか、と。
私はそういう気持ちで、人を育てようとしているだろうか、と。

+++++

転んでも起き上がる

というフレーズの方が一般的ですが、ちょっと歯を食いしばったり、根性が要りそうで、私は

転んだら起き上がる

というフレーズを使います。

転んだら起きりゃいいんでしょ、それだけのこと、という何気ない感じで人生を渡っていきたいんです。


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