Sunday 12 October 2014

演劇にまつわる言葉 日本語篇

演劇にまつわる言葉(演劇 戯曲 俳優 舞台 観客)を、漢字の意味から考えてみます。

1.演劇=劇を演じる。

「劇」という漢字は、漢和辞典でひくと「激」と同義で、激しい、つまり、日常・尋常ではないことを示します。
劇という字のつくりの部分は、獣が取っ組み合いをしている様子なんですって。
右側はもちろん、刀の意味。
獣が取っ組み合いをしているところへ刀を持って切り込んでいくとあっちゃ、こりゃドラマチックですよ。
そう、un-natural なのが、劇なのです。

real に対して unnatural,surreal, non-real, ab-normal

現実に対して、非日常、超日常、似非、異常。
常ならざるもの。
それが劇。

2.戯曲
戯れの曲。
戯れという漢字をさらに細かくすると、虚しいという字に矛(ほこ)。
このブログじゃ漢字変換できなかったけど、つまりは中国の武器です。

「虚」は「実」に対しての「虚」だから、むなしい、という意味よりも、現実ではない、ありえない、夢の、という意味。
口偏がつくと、「嘘」。

「戯曲」の「戯」は「現実ではなく武器を交わす」という意味になるから、誰も死なない。たわむれ。遊び。

では「曲」は?

「曲」という言葉は、曲がりくねるという線の動きから来ているから、時間的経過を含む言葉だとおもう。
「絵」という時間の止まったものじゃなくて、時間と共に進む感覚っての?
必ずしも音楽の曲を表すものではないことは、「戯曲」が文を表すことからもわかります。

ということは、「戯曲」というのは、ある一定の時間戯れるルールを文にしたものでしょうか。

もちろん、曲を音曲ととらえ、本来は音楽が主体であったものが文章主体になっていった、という解釈も成り立ちます。

3.俳優
日本書紀では、「俳優」という単語に「わざおぎ」と振り仮名を振ります。
漢和辞典では「俳」の一語だけでも「わざおぎ」と読ませています。

「俳」の字を分解すると、人に非ず。

ここで言う「人」とは、「常人」を表すものでしょう。
だから、「俳」は人間じゃないものという意味ではなくて、常人じゃない状態の人、という意味が大きいのでしょうね。
神がかっている、とか、獣じみている、とか。
仮面を被ったり、人間の顔とは思えないような化粧を施したり、あるいは感情の度合いを極端に表現したり。
基本は人間だけど、でも、常人の幅を極度に超えた表現をするのが「俳」。

「優」という字も、分解すると切ないですね。
人を憂う。

「俳優」とは、人に非ざる状態で、人を憂う。

なんとすばらしい職業。

実は「憂」という字には、「大きなかしらをつけて足踏みする」という意味もあります。
ますます俳優に相応しいですね。

4.舞台
舞う台です。
それ以上でも以下でもありません。

5.観客
観る客です。
それ以上でも以下でもありません。

しかし、この4と5が、日本の演劇と西欧の演劇とを分ける大きな違いとなるのです。
詳細は、別項。
演劇にまつわる言葉、英語篇で、お話します。

こうしてみてみると、日本語における演劇は、

ある時間内(曲)における現実ではない(戯)が、非日常の激しいもの(劇)を、常人ではない状態になった人(俳)が仮面をつけて足を踏み鳴らし(優)、台の上で舞う(舞台)ものを、観る。

ということに集約される、と思って間違いないでしょう。

漢字ってすごいですね。

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