今日は、某女子短大の2年生に、私の演出家の仕事について語る機会を頂きました。
演出家の仕事について説明した後、なぜその職業に就くことになったのか、そもそも私は繭の中にいるような学生時代を過ごしていて、演劇という「人間を扱う仕事」とはかけ離れたところにいたのです。
浪人時代、ある世界史の年号を目にしたとき、あれ?これは中国でもこういうことがあったのと呼応しているじゃないの、その数年後にヨーロッパにこれがくるんだよね、といろいろなことが、縦割りの「中国史」「イスラム史」「ベトナム史」として捉えていたものが、全世界的に、あらゆることが繋がっていく、繋がっている、そこに人間の流れがある、ということが、目の前の霧が晴れるように、はっきりとリンクして見えたのです。
同じ頃、inspector という単語を目にしたとき、眼鏡という意味の spectacles とspect という部分が同じことに気がつきました。
あー、なんだ、spect というのは、目を丸くしてしっかり見る、という感じの「見る」にまつわる言葉なんだな。それに in が着くから、「検察官」という、調べる人のことになるんだ。眼鏡も、単なる「目のガラス」じゃなくって、しっかり見るための、物なんだ、と気がつきました。
それから、出会う単語は、全て「元の言葉」があって、そこから発展している、元の言葉の意味だけわかれば、あとは何がくっついているかで想像できる、と知り、単語を憶えるのがとても楽になりました。
勉強したのはむしろ do, have, go, get, keep などの基本単語の様々な使い方や前置詞でした。
こういう、ひとつのことから様々なことが繋がって見えるようになる、脳内ネットワークが繋がる、というのは、8歳でハーバードに入る天才も居るけれども、だいたい中学から高校で来るか、もしかしたらもっとずっと後になってから来るかもしれない。
だから、頭が良いとか悪いとかじゃなくて、脳内ネットワークが繋がるタイミングが、人それぞれ違う、ということなんです。
だから、自分が頭が悪いんじゃないかとか、心配しなくていい。
何か繋がらないかしら、と思いながら世の中を見ていくと、ある日、ぱーっと、開けて世界が見えて来ると思います。
さて、この、言葉の元の意味を調べる、というのは演出家の仕事にも繋がっていて、例えば女性の名前で Olivia というのがある。
オリーヴと音が似ている。オリーヴの木って地中海の荒れた土地にしか生えないのよね。
荒れ地に生えるから、根っこがすごく深くてしっかりしてるのよね。
しかも常緑樹で、そういう印象を人に与えるような登場人物として、作家が命名している筈なんだ。
因みに、原語のオリーヴには、「鉄」という意味があって、木の幹がすごく固いから、木なのに「鉄」と名付けられているの。
男性の名前ならオリヴァーだし。すると日本語だと、鉄雄とかになりそう。
ルーシーは、イタリア語のルチア、光、という意味だから、光子ちゃんとか、明子ちゃんとか。
ね、作家が付けた名前の意味を辿ると、そういう要素のある登場人物で演じれば良いんだ、と見えて来るのです。
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この、脳内ネットワークの話は、多くの学生から「自分のはまだ繋がっていないけど、いつか繋がるんだ、と思えたら勇気が出てきました」と感想を頂きました。
次は、いよいよ、演出家の仕事に繋がる、カナダ留学の話です。
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